FAZER LOGIN鍛冶工房に激しい金属音が響き渡る。 ―カンッ! カンッ! カンッ! さっきまで老人だったとは思えない美少女ドワーフ――デッケンが、上機嫌で槌を振るっていた。 神魔力を得た影響なのか、全身から淡い蒼白の魔力を噴き出しながら、真っ赤に熱した金属を何度も叩き続けている。『ふははははッ! これじゃ! これこそワシが求めていた力じゃあああッ‼︎‼︎ 魔力が絶えない、減らない、体に苦痛もない!』 いや、テンション高過ぎるだろ。 その度に鍛冶場全体へ衝撃波みたいな熱風が吹き荒れた。 普通の鍛冶師なら汗だくで倒れていてもおかしくないのに、デッケンはむしろどんどん元気になっている。『見える……金属の声が聞こえるわぁああッ! 完成じゃッ‼︎』 普通なら数日掛けて完成する武器が、3時間の末に完成したらしい。「どんなものができあがりました?」 デッケンの手にはロングソードが握られており、刀身部分には氷属性が付与されていた。「握りやすいし、何より軽いわ。これなら動きやすいわ」 シグルーンが刀身を振るう度に、氷属性の冷気がブワッと周囲へ広がった。まるでクーラーを浴びてるかのように冷んやり涼しい。『それと妹さん用の武器も作れたぞ、ほれ!』 予想外だったのかセレナも武器・氷属性付与された魔力杖を受け取ると、喜びながら感謝を伝えた。「私にも、ありがとうございます! では早速」 魔杖へ魔力を流した瞬間、《アイスボール》が次々と自動生成された。 しかもセレナ自身の氷属性魔力は一切消費していない。 さらに《アイスブースター》という効果まで付与されているらしく、氷属性魔法の威力そのものも底上げされていた。 初級《ボール》だけじゃなく、《アイシクルランス》という氷属性で創成された円錐型の槍が複数出現してカカシを貫いた。 この火山地帯は火属性モンスターメインだから、水・氷属性がかなり活躍出来そうだ。 自ら作った力作である氷の魔剣・氷の魔杖の効果を見たデッケンは、満面の笑みを見せた。『感謝を言うのはワシの方じゃ! まさかこんな簡単に創世級クラスの武器が作れるとは思わなかったわい』 デッケンは「うんうん」と頷きながら、いつもの癖で結んでいた髭を触ろうとしたが、そこには髭が無い事を忘れていたらしい。 慣れた様子で腕組みしようとしたが、膨らんだ胸に腕
鍛冶屋の空気が一瞬で止まった。「……は? 今なんと言った?」 デッケンが目を見開いたまま固まっている。 俺の装備していた戦闘メイド服は、黒と蒼を基調とした禍々しくも神聖な色合いへ変化……というよりも進化していた。 氷属性鉱石だった部分には淡い蒼光が流れ、まるで生きているように脈動している。「創世級クラスに……なっちゃいましたね」「そんな簡単になられたら、鍛冶屋は廃業じゃぞ……だが! 近くで見てもよいかの?」 俺の許可を得る前から、既にドワーフの老人が間近にいるから鼻息が脚に当たっている。 下手したら生脚に興奮している変態オッサンだろうが、ここは一つ職人だからと目を瞑ろう。「ど、どうぞ」「何と神々しい姿じゃ! これが創世級クラスの防具とは!」 そして空気そのものが変わり始めた。 店内の異変に気付いて冒険者達が中に入って来ると、俺の装備を見て圧倒されていた。「何だその装備!?」「とっても可愛い、私も欲しい!」「俺もあんな見た目で、カッコいい防具が欲しいぜ!」「まさかデッケンさんがあんな伝説の防具作ったのかよ!」 ざわめき始める店内に慌てて、デッケンは冒険者達を外に追い出して看板を「CLOSED」に入れ替えて扉を厳重にロックした。「……ハッ! ワシにそんな技術あったら、王国から追い出されるわけなかろうて! 今日は大事な仕事で店仕舞いじゃ!」 俺達は奥にある鍛冶工房へと連れて行かれた。「お前さんらはちょっとこっちに来るんじゃ。……ふぅ、危ない危ない。危うくワシが作った事にされるところだった!」 自分がこんなモノを作れると勘違いされたら、他の冒険者達からも作ってくれと勘違いされるからな。 まさか思いつきで試しただけなのに、本当に出来るなんて俺も予想外だったからな。「デッケンさんに迷惑掛ける事になるとは、申し訳ないです」「ワシの事は気にせんと……お嬢ちゃん。お前さん、本当に何者じゃ? 創世級クラスの武器を一から作るならまだしも、最低ランクの一般級クラスから一気に創世級クラスまで進化させるだなんて聞いた事がないぞ!」 汗を流しながら、俺の戦闘メイド服を凝視している。「王国の女王ですよ。たまに長年愛用していた武具に持ち主の魔力が流れて成長する〜なんて
変なトラブルもあったが、防具の買い物は無事済ませた。 収納魔法・《インベントリー》から直接、服装を防具へと早着替えする事ができた。 内側から冷気が風に乗って全身へと循環するから、この山脈や火山地帯にいても暑さや熱気がほとんど感じない。 金属鎧特有の重さや圧迫感も無く、この服装のまま普通に眠れそうなくらい快適だった。「とても快適な気分です、ありがとうございます。クロエ様!」「動きやすいわ。コレなら戦闘も問題ないわ。ありがとね。クロエ」 姉妹の戦闘防具に不満はないみたいで良かった。 ミニスカだから、中が見えそうで見えない絶妙なラインが、男心を刺激するには十分だった。 そして戦闘メイド服の俺とニーナはというとーー。「こちらの方がご主人様を護衛するのに、動き易さ重視となっているみたいですね。ありがとうございます。クロエ様」「皆が喜んでもらえて良かったよ。まだ時間があるし、今度は武器を見てこようか」 俺の提案にシグルーンが鞘から剣を抜いて、刀身を確かめる。「それは良いけど、モンスターの弱点属性なんか気にならない程、神聖属性が強過ぎるわよ。それに斬れ味・強度・自動修復もあるから常に新品状態で戦っているようなものよ?」「まぁ旅をするからには、その地方の防具や武器に合わせた方が楽しいって」 ファンタジーゲームで新しい街に到着したら、武器や防具を新しく購入したものの、ダンジョンの宝箱で購入したのが出たりするんだよな。 あっ……すっかり忘れていた。 まぁ、この異世界のダンジョンが同じとは限らないし、買っておいて損はないだろう。 セレナが良い案を思いついたのか、手をポンと叩いて答えた。「リチャード王から鉱石のお土産を貰ったので、鍛冶屋に行って新しく武器を作ってもらうのも良いかもしれませんね」「そうだな、それも良いかもな!」 という事で制作した武具を武器屋・防具屋に卸している、鍛冶屋の元に行く事にした。 ♢♢♢ 中に入ると冒険者達が様々な武具を見回っているが、彼女達は氷属性付与された武具を装着してないのか、全身から汗が滝のように流れていた。 俺達は暑さ対策の防具を着てるから良かったものの、こんな汗だくのまま見回るだなんて正気の沙汰とは思えない。 特に鍛冶屋は常に炎を絶やさない様にしているから、室内だから外よりも更に気温・湿度が高い。 彼
宿場町に到着すると、名前の通り殆ど宿泊宿が多い街並みだった。 ニーナが馬車を停めながら説明してくれた。 石造りの建物が街道沿いに並び、旅人用の酒場や武具屋、馬車修理屋まで揃っているとの事だ。 昼間だというのに大通りは活気に溢れており、冒険者、商人、貴族やその傭兵達が行き交っていた。 馬車の駐車スペースに荷車を置いて、馬も休憩させる為に馬屋に預けさせて、宿場町の通りを一通り観光する事にした。「おい、見ろよ。あの姉妹……」「貴族か?」「バカ、ローゼリアの女王とその妹だ。他国の女王が直々にドワーフ王国に何か用事……」「武具が必要って事は、どこかと戦争をおっ始めるつもりじゃねえか?」「それに護衛メイド2人の気配が違うぞ……」 どうやら俺とニーナは未だロイヤルメイド服な為、セレナとシグルーンの護衛メイドだと勘違いされているらしい。 それもそのはず、俺は女王になったとはいえ戴冠式もしてないし、隣国はラヴレスト王国くらいだからな。 ドワーフ王国の領土どころか、冒険者パーティなら知らないのも無理はない。 俺は4人に《念話》で会話する事にした。(余計なトラブルは起こしたくないし、皆がそう思ってるならそう思わせよう)(わかりました。私は誰のメイドと思わせますか?) ニーナの質問にセレナが食い気味に答えた。(私は断然、クロエ様が良いですわ)(私はニーナをメイドとして呼ぶわ) メイドが好きなニーナはウキウキで答えた。(わかりました。以後シグルーン様とお呼びします) そのまま俺達は、主人と護衛メイドという設定で動く事になった。 俺もここから口調を変える事にした。「ドワーフ王国へ向かう連中が多いですね」 「えぇ、特に最近は武具需要が増えているらしく、各国の商人達も集まっています」 商人達にとってはここで稼ごうと、露店商を開く事が多いらしいが……回復アイテム等は若干割高となっているのは仕方ない。(通常時がコレですから、クロエ様の宝石による輸出が増えれば、この宿場町も人が更に増える事でしょう) 露店商が並んでおり、少し歩くだけでも次々と商人達に声を掛けられたが、回復系アイテムは特に要らない為スルーしていた。「ささっ、そこの王族のお嬢様達、この武具を見てってくださいよ! これはドワーフ王国産の武具だよ」 武器商人に勧められて少しだけ見させ
翌朝。 太陽が昇り始めた頃、森の中を吹き抜ける風は心地良く、木々の葉を静かに揺らしていた。 朝靄に包まれた森は、地球の田舎道みたいで少し懐かしかった。 まぁ……盗賊も魔物も出る時点で平和とは程遠いんだけどな。 だからこそ、どれだけ頑丈な馬車を用意していても油断は禁物だった。 俺達は王城で一泊した後、ラヴレスト王国の正門前へ集まっていた。 ここで、リチャード達とは別れる事になる。 馬車の窓を開け、俺は最後に感謝を伝えた。「改めて、ありがとうございました。リチャード王」「だから王呼びはやめろっての!」 リチャードは豪快に笑いながら肩を竦める。「俺達はもう友好国なんだ。リチャードでいい」「では……リチャード。色々と世話になりました」「おう、それでいい! 世話になったのはこっちの方だがな。クロエ」 すると、リチャードが後方へ向けて手を振った。「おい、持って来い!」 馬車後方に控えていた作業員達が、一斉に荷物を運び始める。 積み込まれた木箱の中には、三種の鉱石。 さらに、この国の名産品である果実、干し肉、保存食、果実酒まで大量に詰め込まれていた。「こんなに……?」「ドワーフ王国まで二週間近く掛かるから、逆に少ない方かもしれん。だが旅の途中に宿場町で補給もできるから、心配しなくて大丈夫だ」 本当に面倒見の良い王様だ。 いや、俺が今まで出会った王達が良い人ばかりかもしれん、俺の優しさに皆が応えてくれただけかもな。 下手したら、俺の優しさにつけ込んで利用するだけの連中も現れるかもしれないしな。 まさか、王になったらなったで、大変な目に遭うかもしれない。 御伽話みたいに贅沢な暮らしばかりではないんだな……地球の歴史を振り返ったら、王となった人は暗殺されたり、信用していた家臣に裏切られたり……碌な末路を辿ってないな。「それと、私の戴冠式には是非来てください。諸外国との友好関係を結んだ後、正式に日程を決める予定ですので」「わっはっはっはっ! 普通は王が自分で動き回ったりしねぇんだがな!」 それに関しては、セレナとシグルーンも「うんうん」と顔を頷き納得していた。 リチャードは呆れたように笑う。「お前さんは普通じゃねぇ。そこらの軍隊より強いんだから好きに暴れてドワーフの連中を驚かせて来い!」「はい。では、また会いましょう」
王都へ帰還した俺達を待っていたのは、割れんばかりの歓声だった。 三種ドラゴンから採取した宝石は、既に大量に鍛冶屋・宝石商へ運び込まれていたらしい。「リチャード王が帰って来たぞォォォッ‼︎」「三種ドラゴン討伐成功だってよ!」「嘘だろ!? あの未攻略ダンジョンをか!?」 王城へ続く大通りには既に民衆が押し寄せており、窓から身を乗り出す者、酒場から飛び出してくる者までいた。「見ろよ……あの荷車、全部宝石だぞ……」「一生遊んで暮らせる額じゃねぇか!?」「あれだけじゃ済まねぇ……武器、防具、装飾品……全部が変わるぞ」「ラヴレスト王国は、本当に大国になるかもしれねぇ……!」 一番は冒険者ギルドにいた、冒険者達が外にまで飛び出してきた。 冒険者達の視線は、俺達というより荷車へ釘付けだった。 三種ドラゴンの素材は、本来なら国家級依頼でも滅多に手に入らない。 特にサファイアドラゴンの氷結鱗は、高級防具の素材として有名だ。 荷車単位で運ばれているのだから、騒ぎにならない方がおかしい。 リチャードは馬車の窓を開けるなり、いつもの豪快な笑みを浮かべた。「わっはっはっはっ! 今回はキャメロット王国より優秀なクロエ・ペンドラゴン女王陛下の協力により、三種のドラゴンを討伐しただけでなく味方に付ける事が出来た。コレは予想以上の収穫だった!」「途中から隠れてましたよね?」「バカを言うな。王とは最後に立っているだけで勝ちなのだ!」 とんでも理論なのは仕方ないが実際、王が生き残っているだけで良い。 民衆達はそんな事など気にせず、リチャード王へ歓声を送っている。 それだけこの国では、“生きて帰って来る事”そのものが価値なのだろう。 俺は馬車の窓から外を眺めながら、小さく息を吐いた。 ルビー、サファイア、エメラルド――。 三種ドラゴンをアンデッド化した事で、あの鉱山は今後、この国最大級の資源地帯へ変わるはずだ。 しかも今回は、それだけでは終わらない。 王城の中庭には既に、大量のルビー・サファイア・エメラルドが運び込まれていた。 王城でお抱えの鍛冶職人に加工してもらう事で防具・武器、はたまた7人の妻達の宝石やネックレスにもする事が出来る。 ある意味、7人分の宝石を買う無駄金を節約には十分だろう。「リチャード王よ! 見てください、この量を!」 興







